得意先に納品する予定の製品を落として壊した従業員に対して、会社は修理代を全額その従業員に請求できるか?

民法715条1項により、会社は、従業員が仕事をする上で他人に加えた損害を賠償しなければなりません。(使用者責任)

そして、同2項により、会社は損害を生じさせた従業員に対して弁償を要求できます。(求償権の行使)

ただし、会社は事故の危険性をはらむ企業活動によって利益をあげていることや、従業員の過労や会社の設備上の危険も無視できず、損害の全額を従業員に要求するのは無理があると言えます。

最高裁判決では「使用者はその事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができるものと解すべきである。」として求償額を四分の一に制限しました。

会社を誹謗・中傷する従業員を懲戒解雇できるか

会社を誹謗・中傷する従業員を懲戒解雇できますか?

たとえば、会社を批判するビラを配布した従業員に対しては、譴責・出勤停止等の懲戒処分であれば可能とする判例もありますが、懲戒解雇となると判例上有効とした例はありません。

大日本印刷事件(東京地方裁判所昭和59年12月21日判決)では、会社を批判した従業員を出勤停止に処し、さらに反省のない従業員を解雇した事案については、出勤停止処分は有効ながら解雇は無効とされました。

なお、言論・表現の自由上、会社批判をされたとはいえ、懲戒処分を科すには、企業の信用を失墜させ、円滑な企業運営に支障をきたすおそれがある等の重大な理由がなければなりません。

職場での人間関係のトラブルを理由に従業員を即時解雇できるか

即時解雇は解雇権濫用となり、裁判では解雇無効と判断されるおそれがあります。

現在の職場で人間関係のトラブルがあっても、まずは配転などにより解雇回避努力をする必要があります。

中小零細企業においては配置転換する余地はないと思われますが、それでも職場環境を良好に調整すべく等、解雇回避のための努力が求められます。

協調性の欠如を理由に従業員を解雇するには

協調性の欠如が業務の遂行に重大な障害となっている場合には、解雇事由とすることが可能です。

特に中小企業の場合、少人数でのチームワークが業務の円滑な遂行に欠かすことができません。

協調性がないからといって、協調性を必要としない職場への配置転換など不可能だからです。

就業規則にも、解雇事由のひとつとして、協調性のないことを規定しておいた方がよいでしょう。

更に協調性の欠如により職場秩序を乱すに至った場合には懲戒解雇の対象とする旨も定めておいた方がよいと思われます。

不祥事を起こした従業員に始末書の提出を命じることはできるか

始末書の提出を任意に求めるのであれば問題ありません。ただし謝罪や反省を強制する意味での始末書の提出を命じることには、個人の自由意思尊重の観点から問題があります。

業務命令として提出を強要したり、始末書の提出に応じなかった者を懲戒処分することはできません。

ただし、謝罪や反省を強要するのではなく、純粋に事実の報告を求める形式の書面であれば、個人の自由意思に関わりのない話なので、業務命令として提出を命じることができると思われます。

したがって始末書ではなく事実経過書・報告書のような書類の提出を命じるとよいでしょう
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